夏は動物園より水族館!

そう思っている人はわたしだけでなく、実際に足を運んだ人・これから行く予定の人は少なくないはず! とはいえそれはなぜ? 答えは、水が見られるから。

もちろん、一つひとつの生物観察もいいですが、透明なアクリルガラス越しに表現された水中世界には思わず目を奪われます。今回は、水族館ラブなわたしが、水族館プロデューサー(仕掛け人)として、業界で著名な中村さんにお話をうかがいました。
○水族館には何を見に行くか  

――日本は世界一水族館が多い国といわれています。「夏=水族館」「デート=水族館」「家族旅行=水族館」というイメージがありますが、これはなぜでしょう?

中村さん:まず、日本人は海や川の生き物を捕って暮らしてきたという歴史があるからでしょう。普段食べているものが、どういう環境で暮らしているかとか知りたくなるじゃないですか。また、水に囲まれた環境のため、水中に対しての好奇心が強いと思います。芸術の都・パリには画家などのアーティストが多いため、人々の美術に対する好奇心が強く、その結果、パリに美術館が多く存在するのと同じ構造でしょう。

さらに、日本人は生命に対する好奇心が強く、生命に対する感謝の気持ちを強く感じているのではないかと思っています。海や川が、命の糧となる自然の恵みを授けてくれたり、時には人の命や作物を奪ったりする。そのため、自然に対する畏れのようなものも同時に持つ。自然の中で生かされているという気持ちが強いわけです。

水族館は水の塊とそこに生きる生物を見に行くところです。私は、水中感の高い水槽を水塊(すいかい)と定義しているのですが、水族館は「水塊の中に自然」を見せてくれる場所なんです。
○短所を長所にした水族館

――中村さんが長く勤務し、改修を担当されたのが鳥羽水族館です。決められた通路がなく、自分の興味のある水槽を、好きな順番で見て回れる自由度が特徴です。どんな狙いがあったのでしょう?

中村さん:ひと昔前まで、水族館はジトジトベトベトするイメージで、デートどころか、おしゃれして行ける場所ではありませんでした。水族館の提供者側も、「水族館は科学教育をするための場所」と考えて、それ以上の発想をすることはありませんでした。そして、いつのまにか子どもをお客さんにした施設となっていたのです。でも子どもの教育は学校で行いますよね、水族館で行うことではないのです。

――そこに中村さんが入社されたのですね?

中村さん:私が鳥羽水族館へ入社したのが1980年。当時はバブル時代で、人口的にも一番多いバブリーな人たちを呼ぶのが得策じゃないか? と思いつきました。そこで新水族館へと建て替えた折に、「水族館はデートに使える場所!」「おしゃれをして来ていいよ!」という新しい提案を、マスコミを通して一生懸命アピールしたところ、「デートに使える水族館……これ来た!」と、情報をキャッチした男性が女性を誘い、「おしゃれして行けるなら行ってみようかな」と応えたわけです。大人をターゲットに集客するほうが増客につながるのですね(笑)。

――どのような考えで設計をすすめたのでしょう?

今のような「通路なし」スタイルになったのは、およそ30年前のこと。改修のディレクター役に任命されたのですが、鳥羽水族館には弱点がありました。新館建設地が海沿いの細長い土地であること、飼育生物が多すぎることです。そこで考えたのが、水族館のセンターに大きなエントランスを作り、そこからそれぞれが廊下を歩いて興味のある展示室に入っていく流れです。

そして、展示室内の通路に2段階の段差をつけました。それが、通称「ステップギャラリー」。その部屋の生物に興味がある人は水槽の真ん前に行ける通路を、水槽全体をざっくり眺められればいい人は後ろの広いギャラリーを選べばいいのです。

――斬新なスタイルですが、どのような評判だったのでしょうか?

中村さん:最初は、館長や営業部からも、「お客さんが迷ってしまうだろう」などと指摘されましたが、結果としてお客さんからは好評でした。館長を中心とする水族館スタッフの大部分は根っからの生物好き。(多くは生物などを専攻する)大学以降の知識で、「どんなマニアックな知識があるか」といったことを競うような生物オタク路線で考えてしますのです。

でも、一般の人はそこまで知識を求めませんよね。特に、僕が「デートで使える水族館」なんて提案をしてますから(笑)、明らかに客層が変わってるのですよ。
知的好奇心が人間には大事

――水族館に出かけると、癒やされるのと同時に、海の生物への興味が無限に湧いてきます。水族館はエンタメ空間でありながら、生物のことを学ぶ教育的な意味合いも強いところですね。

中村さん:水族館は「社会教育」を担う場所です。社会教育とは、国民の教養や知識を豊かにすると定義されています。生物や自然環境……に加えて、哲学であり人の生き方です。人は生物を見ると好奇心を覚えます。どんな生物も子どものうちは好奇心の塊ですよね。生きるためにさまざまなことを知る必要があるからです。

この「好奇心からなんでもやってみる」という姿勢から学んで、生物は成長します。ちなみに、野生の生物は大人になると、生き残る為に好奇心が不要で減退しますが、人間は知的好奇心が死ぬまで持続する珍しい動物ですね。

○2018年最新! いま行くべき水族館

――最後に、おすすめ水族館を教えてください。

中村さん:一つに絞れないので、いくつか挙げさせてください。自分がプロデュースしたところは思い入れが強いですが、ここに挙げたところは、行っても後悔しないはずです。また、入館料と内容の充実度というコスパ感も最高です!

今は著書「中村元の全国水族館ガイド」改訂版のために、日本中の水族館を巡り直していると言う中村さん。業界では有名人になってしまったため、ときには変装することもあるのだそう。

そして、取材時にルールにしているのが「入館料を自分で払うこと」、それから「広報を通さず、自分の目で見て感じたことを軸に紹介記事を書くこと」。なるほど、これは信ぴょう性の高い貴重なリストと言えます。これは、全部行くしかない!!

○取材協力
中村元
日本で唯一人の水族館プロデューサー。最近だと、サンシャイン水族館とマリホ水族館を手がけている。過去には北の大地の水族館や新江ノ島水族館、ソウルの水族館なども手がけた。また北里大学学芸員コースにて「展示学」を教え、東京コミュニケーションアートECO専門学校の教育顧問を務める。近著に『水族館哲学 人生が変わる30館』文春文庫、『常識はずれの増客術』講談社+α新書など。
(木村悦子)

画像提供:マイナビニュース


(出典 news.nicovideo.jp)


(出典 www.sunshinecity.co.jp)


「水族館」って言葉が不思議なんだけどなー。